みんなの就職エピソード

Aさんのエピソード

30代 女性 統合失調症 清掃

■就労移行支援に出会うまで
Aさんは「統合失調症」と診断されています。統合失調症は、脳内で情報を伝える神経伝達物質のバランスの崩れが関係していると考えられており、考えや気持ちがまとまらなくなる状態が続く精神疾患です。自分の悪口を言われる幻聴や思考・理解・判断などの知的な能力の障害がみられ、生活・社会活動全般に支障をきたしています。

病気発症後は、金銭面の不安が一層強くなり、病気を隠してスーパーや物流会社でのピッキングの仕事など様々な職を転々としてきましたが、どれも病状悪化を理由に退職となりました。ハローワークへ相談し、就労継続支援A型事業所を利用していたこともありましたが作業についていくことができず、アステップを紹介され、見学・体験を経て利用開始となりました。

■就労支援の開始から就職活動へ
「将来は安定した仕事に就きたい」との思いがある一方、スタッフとの面談時には、毎回「事業所に来ることが億劫で本当は休みたい、働く自信がない」と話していました。自信をつけてもらうためにも、清掃や軽作業、就労支援プログラム、週1~2回短時間の実習に取り組んでいただきました。

訓練をしていく中で、「同じことを繰り返し行う作業・身体を動かす作業」が合っていることに気づきスタッフが見つけてきた、高齢者の通所介護施設での清掃・厨房補助に1か月間、お寺での清掃作業に3週間の実習に取り組みました。実習中はできないことに何度もぶつかり、「実習先に迷惑をかけていないだろうか」「実習をやめたい」など不安が次々と湧いて出てきていましたが、休むことなく、最後までやり遂げました。実習先でも、休むことなく真面目に作業に取り組んでいた姿勢は高く評価していただき、Aさんの自信につながりました。

■実習から就労へ
実習先へそのまま就職になったメンバーの話を聞く機会がプログラム中にあり、「私も実習先で就職できたらいいな」との思いを抱くようになりました。そこでスタッフが見つけてきた、有料老人ホーム内の共同スペース・居室清掃の実習に取り組むことになりました。ここでもうまくいかないことにぶつかると、「実習をやめてしまいたい」など不安をスタッフに話すことがありましたが、実習先の職員さんとの関係もよく、休むことなく実習をやり遂げました。

実習後、企業から「雇用したい」とのお言葉をいただき、Aさんも「働きたい」との気持ちが強く、雇用決定となりました。「仕事ができるのだろうか」との不安に対し、実習中と同じ業務内容や職員さんお手製業務マニュアルを用意していただくなどの配慮や、ジョブコーチさんの支援のおかげで、安心して業務に取り組むことができているようです。

Aさんの良いところは、うまくいかないことがあっても、いろんな人たちの力を借りながら、休まずに仕事を続けていることです。企業側も、休まず真面目に仕事に来ている点を高く評価しています。業務をこなすことも大事なことですが、まずは、休まずに出勤することのほうが大事であることをAさんから学ばせていただきました。